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ページ構成について
目次
序文
1.労働関係法規の適用
2.雇用関係の開始
3.公民権・労働憲章
4.労働条件
5.人事制度
6.安全衛生・労災
7.就業規則
8.労働条件の変更
9.企業の再編・組織変更時の雇用保障
10.雇用関係の終了及び終了後
11.雇用平等
12.職場における人権
13.非正規雇用
14.外国人労働者

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Home > データベース(労働政策研究支援情報) > 個別労働関係紛争判例集 > 4.労働条件 > (14)【賃金】賃金の支払いの諸原則

データベース(労働政策研究支援情報)

(14)【賃金】賃金の支払いの諸原則

1 ポイント

(1)賃金の支払方法については、労基法24条の定める通貨払い、直接払い、全額払い、毎月1回以上・定期払いの原則が適用される。

(2)労働者の賃金債権の放棄や合意による相殺は、労働者の自由な意思に基づくものであると認められる合理的な理由が客観的に存在していたといえる場合には許される。

2 モデル裁判例

日新製鋼事件 最二小判平2.11.26 労判584-6

(1)事件のあらまし

訴外Zは、Yに在職中、同社の住宅財形融資規程に則り、元利均等分割償還、退職した場合には残金一括償還の約定で、同社から87万円を、A銀行から263万円をそれぞれ借り入れた。各借入金のうち、Yへの返済については、住宅財形融資規程およびYとZとの間の住宅資金貸付に関する契約証書の定めに基づき、YがZの毎月の給与及び年2回の賞与から所定の元利均等分割返済額を天引きするという方法で処理することとされ、Zが退職するときには、退職金その他より融資残金の全額を直ちに返済する旨約されていた。Zは、借財を重ね、破産申立てをする他ない状態になったことから、Yを退職することを決意し、Yに対して、退職の申し出とともに、上記各借入金の残債務について、退職金等による返済手続を依頼した。Yは、Zの退職金と給与から各借入金を控除し、Zの口座に振り込んだ後、Yの担当者が、Zに対して、事務処理上の必要から領収書等に署名捺印を求めたが、Zはこれに異議なく応じた。その後、Zの申立により、裁判所は破産宣告をし、Xを破産管財人に選任したところ、Xは、YがZの退職金につき、以上のような措置をとったことは、労基法24条に違反する相殺措置であるとして、Yに対して退職金の支払いを請求した。

(2)判決の内容

労働者側敗訴

労基法24条1項所定の「賃金全額払の原則」の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものというべきであるから、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであるが、労働者がその自由な意思に基づき右相殺に同意した場合においては、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定に違反するものとはいえないものと解するのが相当である(最高裁昭和44年(オ)第1073号同48年1月19日第二小法廷判決・民集27巻1号27頁参照)。もっとも、右全額払の原則の趣旨にかんがみると、右同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならないことはいうまでもないところである。

本件事実関係によれば、Zは、Yの担当者に対し右各借入金の残債務を退職金等で返済する手続をとってくれるように自発的に依頼しており、本件委任状の作成、提出の過程においても強要にわたるような事情は全くうかがえず、各清算処理手続が終了した後においてもYの担当者の求めに応じ、退職金計算書、給与等の領収書に異議なく署名押印をしているのであり、また、Zにおいても、右各借入金の性質及び退職するときには退職金等によりその残債務を一括返済する旨の前記各約定を十分認識していたことがうかがえるのであって、本件相殺におけるZの同意は、同人の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在していたものというべきである。

3 解説
(1)通貨払いの原則

賃金は通貨で支払わなければならない。現物支給による弊害を防止し、労働者にとって最も安全で便利な支払方法を命じたものであり、例えば、小切手による賃金の支払いは許されない。また、労働協約で別段の定めをするときには通貨以外のもので支払うことが認められる。なお、会社が従業員に支給する自社株式について、労働契約において賞与として支給することを確約した場合には具体的な請求権として「労働の対償」と解することができるが、通貨払いの原則に反するとする裁判例がある(ジャード事件 東京地判昭53.2.23 労判293-52)。

(2)直接払いの原則

賃金は、労働者に直接支払わなければならない。第三者のピンハネを防止する趣旨である。したがって、労働者の親権者その他の法定代理人や任意代理人に支払うことは本条違反になる(未成年者については、労基法59条)。賃金債権は、社会保険の受給権と異なり、譲渡が許されないわけではないが、労働者が賃金の支払いを受ける前に債権を他に譲渡した場合でも、使用者は直接労働者に対して賃金を支払わなければならず、譲受人が使用者に支払いを求めることは許されない(電電公社小倉電話局事件 最三小判昭43.3.12 民集22-3-562、伊予相互金融事件 最三小判昭43.5.28 判時519-89)。

(3)全額払いの原則

使用者は当該計算期間の労働に対して約束した賃金の全額を支払わなければならず、賃金からの控除は原則として許されない。例外として、法令により別段の定めがある場合(給与等の源泉徴収、社会保険料の控除など)や事業場協定を締結した場合(社宅や寮などの費用、各種ローンの支払い、労働組合費のチェック・オフなど)には賃金の一部を控除して支払うことができる。全額払い原則の趣旨は、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするところにある。

そして、判例によれば、この原則は、相殺禁止の趣旨も含んでおり、労働者の債務不履行(職務の懈怠)を理由とする損害賠償債権との相殺(関西精機事件 最二小判昭31.11.2 判時95-12)や労働者の不法行為(背任)を理由とする損害賠償債権との相殺の場合であっても(日本勧業経済会事件 最大判昭36.5.31 民集15-5-1482)、使用者による一方的な相殺は全額払い原則に違反する。

ただし、モデル裁判例のように、労働者が自由な意思に基づいて使用者が労働者に対して有する債権と労働者の賃金債権とを相殺することに同意した場合には、同意に基づく相殺は全額払い原則に反するものではない。これは、賃金債権の放棄に関する合意についても同様である(シンガー・ソーイング・メシーン・カムパニー事件 最二小判昭48.1.19 民集27-1-27)。もちろん、このような同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの判断は、厳格かつ慎重に行われなければならないことはいうまでもない。例えば、署名のある念書や清算手続の書類などにより証明できる場合であり、黙示的な同意が容易に認められるわけではない。また、同様の考え方は、賃金減額の合意の場合にも適用され、判例は、賃金減額に対する黙示の同意の成立には慎重な態度をとっている(更生会社三井埠頭事件 東京高判平12.12.27 労判809-82 (68)【労働条件の変更】参照)。

また、過払賃金を後に支払われる賃金から差し引く「調整的相殺」については、過払いのあった時期と合理的に接着した時期において賃金の清算調整が行われ、労働者の経済生活の安定を脅かさない場合(予告がある場合や少額である場合)に認められる(福島県教組事件 最一小判昭44.12.18 民集23-12-2495)。

なお、ストック・オプションの付与は労基法上の賃金にはあたらないので、就業規則等で定められた賃金の一部として扱うことはできないとされている(平9.6.1基発412号)。したがって、給与の一部をストック・オプションの付与をもって充てる措置はその分だけ賃金を支給していないことになり、本条違反となる。

(4)毎月1回以上・定期払いの原則

賃金は、毎月1回以上、特定した日に支払わなければならない。年俸制の場合でも毎月定期払いをする必要がある((16)【賃金】参照)。ただし、賞与や1ヵ月を超える期間についての手当等はその期間で支払うことができる。

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