国際インターネット保存コンソーシアム(IIPC)の総会(General Assembly, GA)およびウェブアーカイビング会議(Web Archiving Conference, WAC)が2018年11月12日から15日まで、ニュージーランド国立図書館で開かれました。IIPCに加盟している当館からも、WARP担当者が参加しました。概要を報告します。
IIPC加盟機関の代表者が参加した12日の総会ではまず、議長等からIIPCの現状や今後の活動方針について、ワーキンググループのリーダーからこの1年の活動について、報告がありました。また、新たに4機関が加盟したことが紹介され、それらの機関がプレゼンテーションを行いました。既存メンバーによる近況報告の時間も設けられ、当館からも、WARPの英語版インターフェース公開について報告しました。
午後からは、参加者を5つのグループに分けてのディスカッションが行われました。WARP担当者のグループは、保存したウェブサイトの品質保証(Quality Assurance, QA)をテーマに議論をしました。メンバーからは、作業の効率化としてQA自動化ツールを作ればよいのではないかという提案や、アーカイブの重要性をサイトの発信者に理解してもらえなければアーカイブに適したサイトは作成されないといった指摘がありました。WARPにとってもQAは課題の一つです(2017年11月の特集「収集ロボット四苦八苦:収集できなかったファイル」もご覧ください)。他機関の情報も参考にしつつ、改善策を探っていきたいと思います。
総会終了後は、ニュージーランドの先住民マオリの伝統にのっとった歓迎の儀式とレセプションが開かれました。
13~15日に開催されたWACには、図書館員やアーキビスト、研究者など、IIPC非加盟機関のメンバーも含め、約130人が参加しました。
3日とも識者による講演があり、初日は、先住民の権利やマオリ語復興についての研究者であるRachael Ka'ai-Mahuta氏が、マオリ語で発信されるウェブ情報のアーカイブをテーマに、2日目は、GoogleのVinton G. Cerf氏がデジタル情報の長期保存について、また、3日目は、World Wide Web Consortium (W3C)のWendy Selzer氏が、技術的及び法的な観点から、現代や将来のウェブ情報をアーカイブするにあたっての課題等について、論じました。
WACではこのほか、3日間で約50の発表やワークショップがありました。その中から、特に興味深かったものを紹介します。
スタンフォード大学東アジア図書館は2016年から2018年にかけて、日本のウェブサイトを保存するプロジェクトを実施しました。 社会的に関心を集めたテーマに関するサイトを同図書館が選び、発信者の許諾を得て収集したとのことです。後世の研究者にとって重要な歴史資料となるような多様な言説をすくい取りつつ、WARPで保存されていないサイトを主な収集対象とすることも意識されており、大変貴重なプロジェクトだと感じました。保存されたサイトは、スタンフォード大学図書館のオンラインカタログを通じて閲覧できます。
ニュージーランド国立図書館 、フランス国立図書館およびフランス国立視聴覚研究所から、ツイッターの収集について成果報告がありました。ツイッターを収集するにあたっては大きく二つの方法(収集ロボットでページをクロールする方法とAPIを利用する方法)があります。どちらも長短はあるものの、それぞれの機関が自身の目的に適した収集方法を採用し、保存と提供を実現していることが報告されました。
昼食時やセッションの合間は、参加者同士が自由にトークできる時間でもあります。発表者に個別に質問をしたり、他機関の取組について情報収集するなど、和やかながらも真剣な会話が、会場のいたるところで繰り広げられていました。WARP担当としても、今後に役立つような情報を得ることができました。
発表をする・聴くというだけでなく、こうしてウェブアーカイブに携わる世界各国の人たちと直接情報交換をし、親睦を深めるというのも、国際会議に参加する意義の一つです。
次回のGAおよびWACは6月、クロアチアのザグレブで開催が予定されています。次回もウェブアーカイブの最新動向について多数の報告があるはず。今から楽しみです。